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2010年4月 1日 (木)

ニコン F-501

Dscn8976  ニコンF-501はニコンの初のコンシューマ向けAF一眼レフカメラとして欲しい物であった。ニコンの初のAF一眼レフカメラとしてはF3AFもあるが、あれは専用レンズをつけるとAFが利くと言うもので、その後にシステムが発展して継続した物ではないので試験的なサブタイプと言えるだろう。F3AFで試みられたAF機構は、その後のAF一眼レフカメラの起源とされるもので、その意味では重要とされるのだろうが、今となってはネットオークションで見つけるのも困難だ。それで、まあ、F-501を手に入れたからといって、それで意欲的な撮影が叶う訳でもないのだが、ニコン者としては重要なマイルストーンとして欲しい願望はあった。勿論、まとまった金額を投資するつもりは無いので予算は1000円とした。過去には3000円程度で転がっていたのだが、前述の通りF-501で本格的な撮影をしたい訳ではないので長期的に待つとしたのだ。そして2010年の初春、奈良での一週間の精神修行の帰りに寄った名古屋コメ兵で1000円のF-501を見つけたのである。

Dscn8986  裏蓋にビニールテープの素人修理の痕が見られたが、これがどれだけ運用上影響があるかは分からない。しかし、案外場当たり的な処置がしてあるものと言うのは一先ず動く物が多いので拾うことにした。こういうつまらない欲求に耐えられないのだから、精神修行の結果は芳しくないな。帰宅後、電池とフィルムを詰めるとAFも駆動し、シャッターも切れ、露出計もそれなりの値を指しているようであった。ちなみに、F-501はフィルムを詰めないとシャッターが切れないタイプである。

 Dscn8987 本カメラが登場した当時、AFカメラは既にジャスピンコニカのようなコンパクトカメラで実用化されていた。しかし、一眼レフカメラにAFを搭載するのには各社慎重であったようだ。今から考えると不思議だが、一眼レフカメラのユーザーはある程度のスキルを持っており、AFなどなくてもフォーカシングに不都合は無いと考えられたようである。そういう従来尊重型の発想は、それ以前にも一眼レフカメラにAEが必要かという議論も有ったようだし、20世紀末に至っても高級一眼レフに内蔵フラッシュは要らないとされていたからありがちだったのであろう。ニコンは各カメラメーカーの中でももっとも保守的なポリシーであったから一層慎重であったようだ。そこでワインダー内蔵MF一眼レフのF-301と、それと殆ど外装が一緒のAF一眼レフの本カメラの開発を平行で行うことにした。一説によるとF-301には、そのままAFユニットが載るスペースが開いていると言う。これで本カメラが万が一残念な結果に終わっても、一応金型代位はでるのではとニコンも思ったのだろう。しかし、ミノルタα7000の登場によって事態は一変する。

 α7000は本カメラとは正に対照的なカメラであった。α7000のマウントは一新され、MF時代のレンズは取り付けできない。操作系はボタンによる物で従来のカメラとは異なる未来形のものであった。そしてパワーのベクトルはAFに集中している。本カメラはニコンらしく、マウントはそのままで従来のMFレンズも使用可能。操作系はダイヤルを主にするのもで従来のカメラの操作に慣れた方なら問題なく扱うことが出来る。また、ニッチなF3AFのレンズも使用でき、AFテレコンバータTC-16Aを使用すればMFレンズもAFで使用できた。全く、ニコンらしい男気に溢れたカメラである。しかし、肝心のAFへのベクトルはα7000に比べると、今一歩及ばなかったようで後塵を被ることになる。朝日ソノラマの「カメラメカニズム教室」を読んでもよく分からないのだが、本カメラが搭載したハウネルのAFモジュールの位相受光素子の画素数はα7000の半分以下の物で及ばなかったようである。拙僧が、空シャッターを切っている限りではそう違いは分からないのだが、歴史的な廃退は事実なのでそうなのであろう。

 Dscn8989_2

 Fマウントを継承した本カメラはAi以降のレンズならMFレンズでも問題なく使用可能である。瞬間絞り測光を採用しているらしいのだが、これが非AiSレンズでもプログラムAEが利くのかは分からない。

 ところで、本カメラをコメ兵のショウウィンドウから出してもらった際、店員の態度が仰々しかった。同じ時にミノルタSR-7も出してもらったのだが、2つのカメラを出すのを露骨に嫌がられたのである。しかし、考えてみると、一週間の精神修行で伸びた無精ひげに、生活用品を詰めたキャリーバックを引きずった姿はダンボールハウス系ファッションであり、サービス業に携わる方にとっては警戒すべき人物と思われたのだろうな。

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コメント

こんにちは。
>ダンボールハウス系ファッション
カメラを盗まれると店員はおもったのでしょうか。

>一週間の精神修行で
どうしたんですか?
これから何を始めるのでしょうか。

投稿: mi84ta | 2010年4月 1日 (木) 19時51分

どもども、mi84ta殿。

明らかに盗まれるのではという警戒感は感じました。もっとも、この店は原則的に1台しか出してくれないようです。

精神修行というかメンタルケアの一環として参加しました。心療内科の紹介するもので宗教的な物では有りません。
それで心境の変化があったかと言うとそうでもないのですが・・・。

投稿: Rikkie | 2010年4月 2日 (金) 07時54分

Syariさんのブログを見てるとROKKORはいい写りをするなと思います。
どうも。その昔、F-801やF-601を横目に見ながら格安のα7xi(金融新品)に飛びついてしまった者でございます。
ずっとニコンの一眼レフとは縁なく生きて来ましたが、去年ニコンFを手に入れてちょっとニコンが好きになりました。
それで、プラカメも一台は持っていたいと思いニコンミニを手に入れてやろうとカメラ屋へ行くと、それより安いライカミニがあってそっちを購入。
はしさんのレンズが良いという話に気を良くする中、ライカミニのテスト撮影中に、今度はニコンミニより安いCONTAX TVSを見つけてしまいました。液晶表示がおかしいのを承知で買ってきたんですが、DXコードの読み取りが不安定で、ちょっと迷っています。とりあえずはDXコードを読み取らせないで露出補正を使って様子を見ですね。ひどい壊れ方をしなければいいんですが。

投稿: yoh | 2010年4月 3日 (土) 03時53分

どもども、yoh殿。

Syari殿のロッコールの作品には拙僧も啓発されて随分増えました。αマウントのボディは増やさない予定だったのですが、50mmマクロと28~200mmのセットのα7xiがショルダーバック付きで格安だったので拾ってしまいましたね。その後、24~85mmも拾ってしまって面目丸つぶれ。これがニコンやキヤノンだと桁が一つ違います。

ニコンFをお持ちとはうらやましい。先日、Fのケースが1000円で転がっていて、来る日のために抑えておきました。何れは我が家にも迎えたい物です。それで写真を沢山撮るかというとそうではないのですが、野暮ですね(^^;。

コンタックスTVSですか。快調に飛ばしていらっしゃいますね。一先ず、DXコードをキャンセルさせてISO100設定で撮影なさっているのですね。
ニコンミニより安かったとは羨ましい。ミノルタTC-1やニコン35Ti等は手が出ませんが、コンタックスG1はかなり安くなっているので悩ましいですね。

投稿: Rikkie | 2010年4月 3日 (土) 10時39分

F501だけではピンと来るものが少ないですが
「千円」という己に課したハードルで一気に
Rikkieワールドに引きずり込むあたりは
さすがです。

それにしてもF501とAiNikkorの組み合わせは美しいですね。

投稿: 大佐 | 2010年4月 3日 (土) 12時33分

どもども、大佐殿。

今やEOS5レベルのフィルムAF一眼レフも500円で転がっていますが、流石にニコン物はそれなりの価格帯を形成していますね。
初期のAFカメラはMFにも耐えるファインダーを持っているので、Aiニッコールも実用的です。先日、オリンパスE-500にマイクロニッコール55mmF3.5(非Ai)を付けて撮影したのですが、ピントが掴めず苦労しました。
OM101に付いたズイコーなども中々の組み合わせだと思います。

投稿: Rikkie | 2010年4月 3日 (土) 15時32分

あ、これ、実家のメインカメラでしたよ。
発売直後に60kg級の犬の仔犬が11匹生まれましてね(仔犬は300gくらい)、ビデオカメラなどを購入し、501も親父が買ったんです。
それまでの我が家のメインカメラはミノルタのSRT-101。
古いMCロッコールが大変優秀であったことは、501に付属していた35-70mmのレンズを使い始めてから痛感した次第です。

現在のAFに比べれば稚拙なのでしょうが、AFからMFに切り替えるのがカメラを構えながらでもボディー左下のレバーで出来たので、逆にストレスにならなかったですね。
MFもあわせやすいスクリーンだったと思います(301には負けますけれど)。
縦走りシャッターの幕がきちんと開かなくなり、2回修理しましたがダメになり、、、ゴミ箱に捨てました。

ニコンらしい垢抜けないごついものですが、なぜか好感を持っております。
もちろんF-301 の方が好きですが。。。

でも盛大な巻上げ音は、激写を思い起こさせ、80年代的な価値観には適合しますが、家庭のスナップなどには気が引ける事も多いですね。

家庭とカメラの関係を懐かしく思います。
生まれた犬たちも天寿を全うし、親父も他界しましたから、501で撮った親父が犬を連れて居る写真など、当時を思い出します。
つまらん日常に思えることでも、とっておいてよかったと思うことがあります。

であるから、カメラ万歳!!

プラカメでも、可動ジャンクカメラでも、超高級カメラでも、写真を撮るカメラが良いカメラ(某大国のかつての御偉い方がおっしゃった言葉に似ていますが)。

投稿: 横須賀与太郎 | 2010年4月 3日 (土) 18時08分

このカメラや301、意外に好きです。何かEMにちょっとだけ似てるようなところというか
ニコンらしくないところが。
今のニコンの一眼レフのデザイン、特にペンタ部がキライなのですが
これやEMは大きくスッキリなペンタ部でいいですね。
ニコンは今まで一台しか所有したことがなくそれも手放したのですが
今日偶然にもお手頃価格でニコンミニを入手してしまいました。
これで僕もニコン者?

投稿: はし | 2010年4月 3日 (土) 22時46分

どもども、与太郎殿。

おおっ、F-501の登場にリアルに接していらしたのですね。ご発言の端々にF-301への想いが垣間見れて心強いです。拙僧もF-301は好きなんですよね。FE、EMに続く3台目のニコンボディです
。殆ど評価されていませんが、ワインダー内蔵はレース撮影などに重宝しました。今ではFE辺りの外付けワインダーも2000~3000円で転がっていますが、当時は2~3万円はして、何故重く嵩張る単体のワインダーよりF-301の方が安いのか不思議に思いました。F-501が欲しかったのもの、F-301と並べてみたかったと言うのは否定できません。

AFズームレンズより、拙僧と大して年齢の変わらない単焦点の方が映えると言うのは、拙僧はSMCタクマー55mmF1.8で経験しました。これは葉書サイズのモノクロを50枚ほど焼いただけでも確信できる物でした。拙僧の家族の時間を撮影した大切なレンズはブロニカS2のニッコール75mmF2.8です。これは妻と初デーの写真を撮影した物であり、そのときのモノクロプリントは今でも掲示しています。友人の結婚式の写真なども撮影し、友人宅を尋ねると、その写真が掲示されており、写真趣味ものとして冥利に尽きます。

>プラカメでも、可動ジャンクカメラでも、超高級カメラでも、写真を撮るカメラが良いカメラ

おお、それは「農村のフィルムカメラが都市のデジカメを包囲する」と仰った指導者の方ですな。
GWには半島に初上陸する事にしました。あそこは大陸と違って「海鴎」とか「長城」といった文物カメラは無いと思うのですが、取りあえずスーパープレスト1600を買って準備しています。


どもども、はし殿。

ニコンというブランドに対する姿勢というのは世代や写真の接し方によって随分と異なりますね。以前、西武新宿線でミランダのトップカバーに手製のニコンのロゴを貼り付けているご年配(当時、拙僧はアラサー)がいらっしゃって、物珍しくて話をしましたが、そのミランダはニコンの廉価ボディーより遥かに市場価値は高いのではと不思議に思いました。
自分は庶民派だからニコンは持たないと強い意思の方もいらっしゃいますし、他方、ピカイチやニコマートを頑なに認めない方もいらっしゃいます。

拙僧などは自分のお金で買った初めてのカメラがEMなので冷静な評価は出来なのですが、軽快感や若さが魅力的なカメラです。今度の半島旅行にも連れて行きたいのですが、デジカメはコンパクトにしてしまうのかフィルムをコンパクトにするのか悩んでいます。

ニコンに対する何かしらの思いがあれば、ニコン者なのではないでしょうか(^^?。

はし殿の琴線に触れたニコンミニには興味がありますね。
あるとしたら、やっぱりジャンク籠ではなく、ショウウィンドウの中になるのかなあ。

投稿: Rikkie | 2010年4月 5日 (月) 12時33分

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