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2010年4月 8日 (木)

KMZ ゼニット-C

Dscn9027  あるべき常識的なスタイリングと言うのが工業製品にはある。カメラで言えば一眼レフはニコンFやペンタックスSPのようなものを思い浮かべるし、コンパクトカメラと言えばコニカC35オリンパスペンのようなものを思い出すだろう。しかし、そういった常識的なスタイリングを逸脱したカメラのジャンルがある。それがソビエト製カメラだ。言い換えれば西側の美意識と相反するスタイルと言うのだろうか。
 ソビエトの技術と言うのは単純に大きくしたり小さくしたり、或いは簡単にシンプル化したり束ねたりする技術である。それは例えば航空機で言えばSu-17に対するTu-22Mであり、Mi-8に対するMi-6だろう。単純に束ねた例としてはロケットなど賑やかに噴射口が並んでいるのが特徴的だ。
 もう一つ、ソビエトの得意な技術がある。それは単純に組み合わせるというものだ。本カメラはLマウントのライカコピーである距離計連動機のゾルキーに単純にミラーボックスを組み合わせたものである。という事はライカにビゾフレックスを組み合わせたものになるだろうか。フォトスナイパーとどちらが先なのだろう。ニコンFもニコンSPにミラーボックスを組み合わせたものだが、ニコンFが洗礼されたデザインなのに対し、本カメラはあまりにも場当たり的である。しかし、それが我々の常識的なデザインを逸脱して愛らしい。ベースがLマウントのライカボディだから非常にコンパクトである。モビルスーツで言えば、まずアッガイと言っていいだろうな。

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 本カメラはネットオークションで拙僧にしては頑張った6000円台で落札した物である。ソビエトカメラと言えば信頼性に大いに問題があるとされるが、本カメラも例外ではない。もっとも、設計思想が戦前のライカを踏襲しているから、案外トラブルと言うよりは仕様なのかもしれないな。フィルムの装填は底蓋を外して底から挿入するのだが、これにはLマウントのライカ同様、フィルムの下部を大きく切り取る作業が必要である。これはかなり大きく切り取らなければならず、これが上手くいかないとフィルムの下部をフォーカルプレンシャッターが噛んでしまうのだ。本家のライカがどうなのかは知らないが、これを拙僧は初めはトラブルだと思った。また、この状態でシャッターが中途半端な位置に留まると、巻き上げも出来ずレリーズボタンも反応しない。それで完全ジャンクとして老後の分解の楽しみにして放置していたのだけれど、図書館で借りた朝日ソノラマの「カメラメカニズム教室」でライカ型フォーカルプレンシャッターの件(くだり)でシャッターダイヤルがフィルムドラムに直結している事を知る。現在では1軸不回転等間隔ダイヤルが普通だが、このプリミティブなシャッターはシャッター速度の間隔は等間隔ではなく、レリーズボタンを押下するとシャッターダイヤルが回転する。そこで試しにぐりぐりシャッターダイヤルを回転させると、果たしてミラーが下がりシャッターがチャージされた。本カメラはクイックリターンでないのでレリーズボタンを押下した後はファインダーはブラックアウトし、再び巻き上がるまでミラーは降りない。ちなみに、ミラーの押し下げには1本の紐が使われており、そのあまりにもプリミティブな構造は一抹の不安を禁じ得ないが、とりあえず空シャッターを切っている限りでは十数回に一度シャッターが開かない程度で動くようである。50年代半ばから60年代初旬という半世紀も昔のカメラだと思えば上出来である。まあ、半世紀も前のジェット爆撃機を抱える北国もあるのだ。

Dscn9011  軍幹部にはキリル文字で「Зенит-С」のロゴが光る。「C」は「エス」と読み、初代ゼニットにシンクロ接点とシンクロデュレイダイヤルを追加した物である。シンクロデュレイダイヤルというのはよく分からないがストロボの発光タイミングにあわせてシャッターが遅れるのであろう。一見するとスローシャッターに見えるが、本カメラはガバナーは無いので下は1/25止まりで最速は1/500である。本カメラの後裔機のゼニット3/3Mになると巻き上げはノブ式からレバー式になり、フィルム装填も裏蓋を開閉させる常識的なものになるので使いやすくなるが魅力は薄れる。マウントはM39で、これはネジピッチはLマウントと同じだがバックフォーカスが異なるので事実上使えない。興味深いのは、当時特殊用途向けと思われていた一眼レフカメラをソビエトが大量生産したことだ。日本でもアサヒ(ペンタックス)が一眼レフの利点にいち早く気づいていたが、これは先見の目があったと言うことだろう。

 割といい加減なきっかけで直ってしまう(本当に直ったかどうかは怪しいが)のもプリミティブなカメラの魅力だろう。そう簡単に捨てずに取っておくのも一興であるな。

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コメント

断固支持します!!このカメラ。

本家ライカがずるずると馬の小便の如くSLRの発売を先送りし、出てきたカメラは像の分の如く大きく、しかもSLRの特性を無視して真ん中でしかピントを合わせられないという、あたかもルビテルのようなものであったとは(そのようなものでもレンズもよく機械として造りも良いとなれば使ってみたくもなりますが)。

このZenitこそ、真性ライカフレックスであると信じてやまないのであります。
ライカDIIの直系のライカフレックス。
ちょっと田舎に養子に出された感はありますが。。。

わたしの一番好きなカメラの中に入るのでありました。

投稿: 横須賀与太郎 | 2010年4月10日 (土) 00時14分

どもども、与太郎殿。

おおっ!与太郎殿のお眼鏡にもかかりましたか!

本カメラは他に見当たらないほどキュートな一眼レフであります。不釣合いに大きいミラーボックスや、カーブを描いたペンタ部など、構成主義や戦艦ポチョムキンを髣髴するものがありますが、これは半世紀も前のカメラですから当時は最先端のデザインだったのでしょう。
確かに、ドイツの職人の娘さんがロシア貴族み見初められて、慣れないドレスをまとっている風にも見えます。

巻き上げノブは、回転させるとフォーカルプレーンシャッターが巻き上がる感触がダイレクトに伝わってきて、Lマウントライカ系のプリミティブなメカニズムを感じることができて心地よい物です。路面のギャップがダイレクトに伝わるスポーティなサスですね。

ライカフレックスのセンターでしかフォーカシングが出来ないというのはキヤノンEX-AUTOに通じる物があるのでしょうか?
何れにしろ、ライカというカメラは一度は手にしたいと思っているのですが、フィルム環境の「その時」の方が早く来てしまうかもしれません。

投稿: Rikkie | 2010年4月10日 (土) 08時30分

ソ連、ロシアモノとは相性の悪い者でございます。どうも。キエフ、HORIZON202と使いましたが、故障が多くて参りました。
ゼニットですが、M42やニコンマウントの存在は知っていましたが、ゼニット-Cは知りませんでした。「真性ライカフレックス」という意識で見ると、なるほどバルナックライカにミラーボックスを付けたカメラに見えてきます。ゼニット-Cはちょっと欲しくなるカメラですね。
昔、M型ライカを中古で探しても10万円以下のものがなく高くて買えなかった頃、初めて買ったライカがライカフレックスでした。空中像のためファインダーの真ん中でしかピントを合わせられないのはレンジファインダーみたいだと面白がって使っていました。その後ライカフレックスSLを手に入れたこともありましたが、重くてごついので稼働率は低かったですね。

投稿: yoh | 2010年4月10日 (土) 19時36分

どもども、yoh殿。

ソビエト金属製カメラは、就寝前に眺めたり空シャッターを切ったりする分には都合の良いカメラですが、本気で写真を撮ろうという向きにはとてもお勧めできないです。拙僧の個体も壊れたり自然治癒したものですし(^^。

Fマウントのゼニットはちょいちょい転がっていますが、今や本家のニコンFも適価で転がっていますから考え物です。しかし、Fマウントのソビエトレンズがあれば興味深いですね。

ライカフレックスはM5との共闘を狙っていたとも言われて興味深いです。
取りあえずライカと名の付くカメラを手に入れれば物欲も落ち着くのではと思っているのですが・・・。

投稿: Rikkie | 2010年4月10日 (土) 21時43分

Rikkieさん、こんにちは。
写真で見るとペンタ部が大きく見えるので
大柄なカメラのようにも見えますけど
Lマウントライカサイズのボディということは
実際は結構小振りなカメラなんでしょうね。
とても可愛らしい。おろしゃは実用には
不具合がある事が多いですが写りは
たいしたものですし不具合さえ乗り越えられたら
結構愛着がわきます。
ゼニットといえばE型がなんだか前衛的な
デザインでしたね。五輪マークがついてたり、
セレンメーターのところも光線でも出しそうで。

投稿: はし | 2010年4月11日 (日) 14時59分

どもども、はし殿。

ペンタ部とミラーボックス部が大きく見えますが、肩の丈は低いので実際にはプリティです。
精密感や正確さからするとハテナなソビエトカメラですが、不思議とちゃんと写ったりしますね。まれにアタリの個体に恵まれるとそうとう良い移りの場合があります。拙僧の陣営ではM42マウントのユピチェリ9は立体感もあり階調も滑らかで素晴らしい写りです。

ゼニットEも昭和の未来像を髣髴するスタイリングで欲しくなります。火傷することは分かっているのですが(^^;。
ロシア製ウォッカに何を意味するか分からない証票マークが付いていますが、あれを思い浮かべますね。中国の豆板醤のビンにも誰か分からないおばさんのポートレイトが描かれていますが。

投稿: Rikkie | 2010年4月11日 (日) 16時41分

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