キヤノン FT + FL50mmF1.8
本カメラはオーソドックスなデザインである。スタリングも奇抜が無く、安定的。当時のキヤノンに求めていたのは、そういうことなのだ。キヤノンは戦後のフィルム時代から、他社との差別化を目指していた。しかし、それが必ずしも撮影のニーズに沿った物とは思えない。Lマウント距離計連動機の八角形で構成するボディライン
は、人間工学的な使い勝手と言うよりは、単にLマウントライカのエッジが曲線で構成していたから、同じにしなかっただけだろう。それは使い勝手に大した影響はないが、トリガー巻き上げがメジャーなニーズだとは思えないな。キヤノンにとっても模索の時代だったのだろう。しかし、旭光学の一眼レフ市場の開拓という画期的で当時としては冒険的な挑戦に比べると、小手先の工夫に思える。
それでキヤノンが失敗したかというと、大成功だ。個別のモデルが商売的に失敗だったとしても、キヤノンが真剣に投入した戦略モデルは大成功している。だが、よくよく考えると、キヤノンが思うように成功したのはキャノネット(初代)
以降の気がするな。キヤノンが、ニーズ確定とカメラデザイン、設計や製造のノウハウ、生産能力や品質管理、原価計算などの自社の強みを正確に認知し、「売って商売になる商品」としてパーフェクトなバランスを初めて成立したのは、キャノネット(初代)な気がする。
本カメラは凡庸である。しかし、個体のコンディションが健全であれば撮影に困らない。写真を撮る都合では、魅力的な被写体の前に立ち、レリーズボタンを押下した後、カメラは正確な露光をしていればイイ。ところが、キヤノンFTのコンディションは悲観的なケースが多い。スタイリングが安定的で空シャッターは切れるので、モルト交換くらいで撮影できると思ってしまうのだ。しかし、現像結果が自分の認識の甘さを突きつける。
そういっても、半世紀の前のカメラのコンディションに安易に期待する方がどうかしているだろう。肝心な撮影なら、少なくても1回は試写をしないとな。それで、今回も肝心の撮影のネガが残念だ。それは拙僧の管理が不十分なのだが、こういう写真にしてしまうのは、カメラにもレンズにも、被写体にも失礼だよなあ。
キヤノンFTのコンテンツと、FL50mmF1.8のコンテンツもご覧いただきたい。
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コメント
FTbはもってました。貰い物でしたが、旧55mmf1.2付きでした。
追針式メーターがとても使いやすかったです。
でもボディもレンズも重かった!
FTbは「真面目か!」って突っ込みたくなるカメラですね。
投稿: はし | 2013年11月20日 (水) 08時54分
キヤノンは先進性で勝負するよりも、低価格化で競合を圧倒するイメージがありますね。
初代キャノネット、キヤノンP、AE1あたりなんかがそうですが。
一方で、キヤノンダイヤルや前玉交換一眼のEX系など、突飛なものもある点が面白いです。
投稿: ゲルベ | 2013年11月20日 (水) 12時14分
どもども、はし殿。
あゝ、そのFTbが今日も届きました。FD50mmF1.4付きで、落札価格は990円。拙僧も1080円で潔く手を引くつもりだったのですが、兢札者は現れず。いや、レンズのコンディションはグーです。ボディはファインダーがモヤっとしていたり、モルトがダメですが露出計も動くし、なにしろFTよりは遥かに安心して使えます。それに、レンズが肝心なんですよ。FTbなら師団内の階層の深いところに幾つも・・・。
1972年にニコマートELが登場していますから、FTbはガッチリしすぎですよねえ。白状すると、やっぱり稼働するのはAとかTなんですよね。重いじゃないですか。
あ、そういえばぺリックス+FL55mmF1.2をお借りしたままだ!
お借りしている先輩殿には利子として3枚玉AFコンパクトカメラを贈呈させていただきますので、ご勘弁を(mm。
投稿: Rikkie | 2013年11月20日 (水) 19時25分
どもども、ゲルべ殿。
短訳すると「商売がうまい」ってことでしょうか。
低価格化のモデリングが「キヤノンP->初代キヤノネットー>AE-1->T-50->EOS10000」だとすると、カメラの精密機器から弱電消費財への道のりと重なって、複雑な思いですねえ。
EXもレンズ4本を揃えて稼働せず。いや、使ったはずなんですが、PCに取り込んだ形跡がない。
キヤノネックスとかキヤノネットジュニアとか、評価にこぼれた名機もありますね。いや、キヤノネックスが名機かどうかは断定できませんが。
投稿: Rikkie | 2013年11月20日 (水) 19時34分
「詳細なレポートには繋がらなかった」などと書きながら語りますね~
競合他社の話を軸にメカが生まれ歩んだ背景がネタってのが面白いです
投稿: 無尽探査機 | 2013年11月20日 (水) 20時59分
どもども、無尽探査機殿。
いやあ、どうも話が長くなる癖がありまして。
それで資料として精度が高いかというと、全くそんなことは無いのが恥ずかしいのですが。
昨日の税理士さんとの面談結果で6か年の損益計算書を埋めたり、融資担当者とのプレゼン資料をまとめたり余裕はないのですが、ああ、また長いコメントを・・・。
投稿: Rikkie | 2013年11月20日 (水) 21時43分