ツアイスイコン イコンタ35
ロシア海軍の空母(重航空巡洋艦)の「アドミナル=クズネツォフ」が大破したらしい。なんでも浮きドックで修理中に浮きドックが停電、クレーンが落下して甲板に深刻なダメージを与えたようだ。従来から何かと脆弱性を指摘されているのだが、空母のようで飛行甲板がパカッと開いて対艦ミサイルが飛び出す複雑な構造、20年という艦齢 など修復にあたって困難が予想される。ロシア軍は直すと言っているらしいが、多分、廃艦になるんじゃないかな。
「アドミナル=クズネツォフ」が就役したのはソビエト連邦の崩壊末期。試験運用もそこそこに国が無くなっちゃった。貧乏国に落ち込んだロシアが場当たり的に直して動かしていたのだが、とうとうソ連時代の遺産も終焉を迎えるのだろう。ちなみに、途中まで作った二番艦の「ワヤリーグ」はウクライナが抑えたあと、手に負えなくて中国に売却。あれこれでっち上げて練習空母「遼寧」として、ひとまず航空機の発着を可能としている。
ソビエト連邦の都合で運命を左右された被害者は国内にとどまらない。第二次世界大戦敗戦後のドイツはソビエト連邦とアメリカ合衆国の都合により東西に分割されてしまった。この東側ブロックと西側ブロックの経済や軍事の分断と競争を10代20代の方々に説明するのは、ちょっとした仕事である。拙僧は年甲斐もなく10代20代の方々とサバイバルゲームをしているのだが、比較的ミリタリーに近い彼らにとってもおとぎ話だ。ましてやミラーレス一眼のアダプター遊びの若者がしたり顔で「戦前のドイツ製レンズのコーティングが僕の表現に合っているんですよ」などとうそぶいても、そのドイツが戦後に分断されてしまったことを知っているかは怪しいな。
拠点が西側だったライツと異なり、ツアイスは東側のドレスデンだったから戦後は東西に分裂されてしまった。それだけ、規模が大きな組織だったともいえるが。我が国だって戦後は大変だったが、地続きで戦車に蹂躙された東西ドイツ(とりわけ東ドイツ)は何もかもが不足していたに違いない。西側で再建したツアイスイコンが戦後、もっとも早く市場に出したのが本カメラである。市場というのは消滅していた国内市場ではなく北米市場だ。
西ドイツが復活したのは、北米を中心とした西側ブロックにとってソ連を中心とした東側ブロックの脅威に対する壁として西ドイツが復興することが望ましかったからだ。別にアメリカ人が親切だったわけではない。ソ連の戦車隊を阻止するために核地雷まで埋め込まれそうになった。なので、西ドイツはさっさと再軍備して戦争ができる憲法に改憲した。現在、極東の共産主義が台頭するのあたって太平洋の壁として期待される国があるのだが、本人の自覚というのは難しいものだ。
コンテンツもご覧いただきたい。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
日清戦争で、一番最初に撃沈したのが遼寧で、日露戦争で一番最初に撃沈したのがワリヤーグだったと思います。歴史のいたずらとしか思えない名前です。
僕は一時期精神病的に二重像でキチンとピント合わせをしないとシャッターが押せない病気でした。(じゃぁAFつかえばいいのに)いつからか50mmくらいでも目測で撮影が難しくないって気がついてからM3なんかつかわなくなりまして、目測のカメラがスキになりました。
現在、デジカメも発達する所まできたのでそれだけでいいのは百も承知なのですが、なんとゆうかそれこそ海外旅行に出かける時に高性能のデジタル一眼レフだけ、ではつまりません。こんな畳めばポケットに入る目測カメラを1台持って行くと楽しみ方が根底から替わってきます。(しかもフルサイズだ)人間が五感をフルにつかって撮ればスマホなんかよりも面白い撮影体験ができるカメラだと思います。 ローライ35よりもレチナ1シリーズよりも「おまえ、俺がつかえんの?」ってドイツの古兵卒に言われたように思います。
投稿: K-1!輜重兵 | 2019年6月29日 (土) 13時36分
ワリヤーグ破損ですか。ソ連空母の設計母体になったのは旧ドイツ海軍のツェッペリン級で、さらに旧ドイツ海軍が空母設計の参考にしたのが三段空母時代の赤城であると何かの記事にありました。
いわば、巡洋艦と空母の折衷時期の欠点も含んでいる設計なんですよね。
もし、旧ドイツ海軍がライバルの英国海軍アークロイヤル級あたりを参考にしまていたら、そのドイツをコピーしたソ連空母も異なる姿であったと想像します。
旧東西ドイツのカメラ、私はほとんど縁もなくて一度ライカを使っただけでした。印象は過度に仕上げを凝らした工業製品で、乾燥潤滑のレンズなど確かに美しい。なるほどルガーP08を製作した国のカメラですね。
そのドイツカメラを追い掛けた日本のカメラですが、私は日本のカメラ設計の根底には米国の工業製品に見られる利便性や頑丈さにあるのでは?と勝手に解釈しています。
投稿: HOOD | 2019年6月30日 (日) 15時38分
どもども、K-1!輜重兵殿。
なるほど、日清戦争や日露戦争の戦果については明るく無いのですが、おぼろげに記憶があります。
我が国でも前大戦のターンイングポイントになった「加賀」ですが、「かが」として復活したのは嬉しいですね。遼寧の場合は向こうでも正規空母という認識がなく、華圏ではなく東北地区の名前を引っ張り出したのかもしれないですね。正規空母が就役したら「燕京」なんて命名しそうですが。
あっしも焦点距離にもよるのですが一眼レフファインダーがきついなと思う年頃になりました。かといって距離計機でモデルさんの睫毛にピントを合わせる芸当もなく、難しいですね。
スナップではほぼほぼ目測で、しばしばファインダーも見ません。スナップシューティングでは被写体は3mから5mの距離を保ってF8かF11で撮っています。気をつけなければならないのは停止しないとブレてしまいますね。3秒以上停止すると狙撃兵に撃たれるというのがポリシーです。
海外ではミラーレス一眼などは殆ど動員しないですね。一方でデジカメの恩恵も知っているので、比較的よいコンパクトデジカメを動員します。カラー写真はコンパクトデジカメが、やはり便利です。一方でフィルムカメラはモノクロネガです。
本カメラは見た目はキュートですが、使うには侮りがたく気を引き締めます。その辺もいい感じですね。ローライ35よりも遥かに美しいと思うのですが、評価が高くないのは買う立場としては幸いです。処分してしまったのですが、また欲しいです。次回はテッサーでしょうか。
投稿: Rikkie | 2019年7月 1日 (月) 04時13分
どもども、HOOD殿。
ソビエトが戦前から空母開発に熱心だったとは知っているのですが、ドイツ人の空母開発。また、その現脈が赤城まで遡るとは知りませんでした。陸軍国のソビエトやドイツ人には空母というのはハードルも高く、国内での理解も難しかったのかもしれないですね。ロシアの艦船で役に立ったのはガングートくらいだと思っているのですが、向こうではどうなんでしょう。
ライカは一度手に入れてみたいです。IICかM2というところですが、最近のフィルムカメラムーブメントで高くなってしまいました。もっとも、ムーブメントも落ち着いて捌く方としては困ったものですが、相場も下がっていないので困ったものです。
実際にライカが使いたいというよりは、一度は使わないと良いも悪いも言えないからというのはあります。戦前のコンタックスII+ゾナー5cmF2があるので、それなりにしたり顔はできるのかなあと思っているのですが。
一般的に我が国のカメラはドイツ製カメラの亜流とされる傾向にありますが、拙僧は戦後そこそここそドイツ製カメラを模倣していたかもしれないですが、大量生産の体制、一定の品質の向上という点では「ドイツ人のマイスター魂」などという牧歌的な表現(これはドイツ人からしても名誉ではないかもしれないですが)で表現されるコストがかかり歩留まりも悪いデザインというのはまるで違う方向性だと思っています。ビテッサなんて我が国では到底量産は承認されないでショウ。
そういう意味では、アメリカのTフォードに端を発する大量生産を大いに参考にしたというのは合点です。案外、光学機器メーカーもトヨタあたりの生産ラインを取り入れたのかもしれないですね。
投稿: Rikkie | 2019年7月 1日 (月) 04時28分
Rikkie様
改めて取り上げられると、、、
魅力的なカメラですね。3枚玉探検隊としてはNovar付きあたりを考えたこともあったのですが、ちゃんと良すぎて、カメラも魅力的過ぎて、やめた経緯があります。もっとダサダサなカメラで試したかったのかもしれません。スーパーネッテルのTriotar付や当機のNovar付きなど、ミレニアム以降まだフィルムがふんだんにあり、まだ無鉄砲な頃に試しておきたかったように思いますが、、、こう思うと、分別臭くなるのは悲しいですね(FUJICA ST-Fを修理に出した馬鹿が言うことではありませんが)。。。
文化活動…というお言葉、当方にぴったりです。これからしばしばブログで使わさせていただきます。
投稿: 横須賀与太郎 | 2019年7月 1日 (月) 22時32分
どもども、横須賀与太郎殿。
美しいカメラですよね。
確かにノバーのついている物にも関心が高いですね。しかし、たいして変わらない価格帯だったら拙僧は小物ですから、テッサーを蹴ってノバーを選択するのは勇気がいるかもしれないです。
撮影シチュエーションを想像して1本1000円のモノクロフィルムを買う。実施歳の撮影に何本まで組織的な運用が可能な消費か頭をひねる。妻のいない時間帯を確保して現像する。デジカメだったらすべて不要なアクションですから、やはり文化活動ではないでしょうか。
投稿: Rikkie | 2019年7月 3日 (水) 03時31分
どもども Rikkie師匠。
ひさしぶりに歴史の記事でまた歴史熱を目覚めさせられました。
そしてこのカメラ ヤフオクで1000円だったときに買えばよかったです。私はテッサーよりノバー派なので。そして なにかトリオターとノバーも 違う気がするのです。どう違うか説明はできるほどの表現能力がないですが。
ノバー6×6で撮った北岳の夕日の写真はものすごい写りでした。ノバーで各フォーマット揃えたいと たまに思っております。
おっしゃる通りローライ35とは違った美しさがあり 実際 活躍の場はまだまだあると思われます。
投稿: とりおた | 2019年7月 4日 (木) 23時11分
どもども、とりおた殿。
久しぶりに時間が確保できたので掘り下げてみました。肝心のカメラのデビューはあっさりなのですが。
1000円のブツは抑えて得策だったかもしれないですね。確かにテッサーと名のつくレンズはいくつもあるので、あえて3枚玉のノバーというのはホットかもしれません、拙僧も3枚玉は好きですからローライ35はゾナーもテッサーも手放してトリオターのローライ35LEDしか残っていません。
ドイツ製中級レンズシャッター機は東ドイツのヴェラだけでイイかなと言う気も。
中判のノバーも興味深いものですね。拙僧もロワークラスのイコンタかネッターの3枚玉を持っているはずです。
既に撮影に動員したブツもありますから、いずれ報告いたします。
投稿: Rikkie | 2019年7月 5日 (金) 06時53分